凡人には、凡人のための生き抜く戦略がある。(凡人起業―「カリスマ経営者」は見習うな!)

凡人起業―「カリスマ経営者」は見習うな! (新潮新書)

凡人起業―「カリスマ経営者」は見習うな! (新潮新書)

「凡人起業」という題名からして手にとりにくい本です。でも、起業について少しでも考えている人には、ぜひ一読してもらいたい一冊です。
「起業前に起業本を手にする」我々常識人(凡人)にとってためになる、起業準備のための心構えが沢山詰まった本です。

著者は、大手商社、フランチャイズの塾経営、個人の貿易商、税理士事務所勤務の後、自分の税理士事務所開業と、様々な企業や起業をいろんな立場から見つめ、経験しています。そんな著者だからこそ、常識人には常識人流の起業の方法があるという話には説得力があります。

一般に、起業家や一代目の社長というとバイタリティ旺盛のカリスマ経営者というイメージがあります。筆者は彼らの行動力の源を、常識人とは“ずれた感覚”にあるとし、それは才能であると認めます。

P.83

私のような小心者からすると、いやな経験をいやな経験とは感じない感覚は“すれた感覚”と思えるのですが、この“ずれた感覚”は一種の才能であり、中小企業レベルの事業経営においては、それが非常に重要な才能であるように思うのです。

それでは、そんな“ずれた感覚”を持っていない常識人はどうすればいいのか。

P.85

(4)情報収集のために思いついたアイデアのうち、実行しても精神的にそれほぞ苦痛を感じないようなものがあれば、とりあえずどんどん実行する。
(5)実行するには大きな精神的苦痛を伴いそうなアイデアに関しては、できるだけ同じような効果が見込める実行可能なアプローチに変更する。

バイタリティ旺盛なカリスマ経営者の真似をして挫けてしまうよりも、できそうなアプローチに変更して実行してみる。これが、理性や常識のある一般人だからこその攻め方なのです。「なんだ」と言わないでください、一般の「超人」起業本にはこんなアドバイスは書いてないでしょう。

この本には、そのほかにも読みどころ満載です。
著者は税理士なのに、「税理士に経営指導は仰がない」という章があったり、「実際の社長さんはこんな人たち」という章では、筆者が出会ったいろんな社長さんのスタイルを著者の視点で紹介したりしていて、読み物としてもとても面白いです。

あなたがもし起業を考えているサラリーマンだったら、ぜひ一読していただきたい一冊です。