縮小時代の必読書

「都市縮小」の時代 (角川oneテーマ21)

「都市縮小」の時代 (角川oneテーマ21)

題名「都市縮小」の時代、「第一章 世界の町が小さくなっている」、「21世紀、縮小都市がメジャーになる」ここまで、われわれ団塊ジュニアの魂を引きつけるタイトルはないでしょう。
我々ほど、都市縮小の時代を感じながら、それに背を向けて大都会東京(いまだ拡大を続けている都市)で背徳感を感じながら、忙しく生きている世代はありませんから。

その本の中で、今後の日本のキーワードになり得る言葉を見つけました。

P.7

少々穿った見方かも知れないが、増えたり拡大したりできなくなったことに対して市民の間である種の諦観があり、それが総合計画に反映しているようにも思える。

この「諦観」は、この数年まで無かった考えではないでしょうか。
さらに、この本では、欧米、日本で縮小(人口が減少する)都市を取り上げながら、縮小都市の抱える課題とその克服への対応をテーマとしてぶつかっていきます。アメリカ、ヨーロッパ、日本の都市の中で、過去の繁栄(炭鉱、製鉄業、製造業)から見放され、どん底に落ちた町が、様々な取り組みを通じて、その町のアイデンティティを確立していく戦いが描かれます。

この本を通じて気づかされるのは、「縮小の辺境」が持つその可能性です。人口が減少する都市には、必ず「Edge=辺境」が存在し、その辺境は荒廃します。ビルや住居が空室化し、工場が廃業し、場合によっては薬物の売買などが行われる危険地区化してしまいます。
こういった愛想を尽かされた地区をよみがえらせるのが、風変わりのアーティスティックで、変わり達だというのが本書のテーゼであり、醍醐味になります。もちろん、当局の都市開発もその力の補助的役割を果たしますが、辺境復興の力のメインは偏屈達が起爆剤となった地元で設立された民間のNPOです。そこに都市縮小の可能性の本質が明らかにされるのです。

「都市が縮小し続けると、ある地域が辺境化する。空間の辺境化は、しばしば人間の存在自体を辺境化する。辺境化は暮らしに痛みを伴って進展する。しかし、一方では主流派
がつくり出すことのできない、なにか新しいものを創出する。」

日本での事例も紹介されいますが(釜石など)、どちらかというと、均一的に似縮小化の波にのまれた日本では、本当の勝負はこれからといえるでしょう。

地方分権(成功、失敗の地域が発生することを許容する考え)の政治が中心になるのか、中央集権(できる限り均一化した開発発展停滞をめざす考え)の考えが主流になるのかで、地方政治は右往左往するでしょうが、大枠として、縮小都市をどう生き抜いて行くのかは各都市の早急な課題として目の前に立ちはだかります。

果たして、日本の都市に未来があるのか、注視したいテーマであります。